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[ コラム ] 7月-1-2008

 カクテルの語源には、メキシコ説、アメリカ説、イギリス説、フランス説といろいろと伝えられているが、どれも定説とはなっていない。
 どの説を信じるかは自由だが、1748年、ロンドンで出版された小冊子『ザ・スクァイア・レシピーズ(The Squire Recipes)』の中に「Cocktail」という単語が登場しているので、その頃から言われ始めたことは確かなようだ。
 主な説を4つ紹介しよう。

 1)木の枝説
 昔、メキシコのユカタン半島にあるカンペチェという港町での話である。イギリス船の船員たちが上陸して酒場に入ってきた。店のカウンターの中では少年が何かをしている。よく見ると少年はきれいに皮をむいた木の枝で、うまそうなミクスド・ドリンクをつくって、土地の人に飲ませていた。
 当時のイギリス人はストレートでしか酒を飲まなかったので、とても珍しく思った。ひとりの船員が「それは何だい?」と少年に聞いてみた。ところが、少年はそのときに使っていた木の枝の名前を聞かれたと勘違いしてしまったのである。そこで「これは、コーラ・デ・ガジョ(Cola de gallo)です」と答えてしまった。
 コーラ・デ・ガジョーとはスペイン語で「オンドリの尻尾」の意味である。少年は木の枝の形が似ているので、そんな愛称で呼んでいたのだ。
 このコーラ・デ・ガジョーを英訳すると、テール・オブ・コック(Tail of cock)だ。このとき以来、ミクスド・ドリンクのことはテール・オブ・コックと呼ばれるようになり、やがてカクテル(Cocktail)となった。

 2)鶏尾説
 アメリカ独立戦争の最も激しかった頃の話だ。ニューヨーク市の北、エムスフォードというイギリスの植民地に『四角軒』というバーがあった。店をやっていたのはベティー・フラナガンという美人経営者だ。
 独立軍の兵士たちに酒をふるまい、力づけていた彼女は、ある日、反独立派の大地主の家に忍び込んだ。そしてみごとな尻尾を持つ雄鶏を盗み出し、ロースト・チキンにして兵士たちにふるまった。何も知らない兵士たちはチキンをつまみに酒を飲んだ。さておかわりをとバック・バーを見ると、ミックスされた酒のビンに雄鶏の尻尾が差してあった。そこで兵士たちはチキンの正体を知り、「カクテル万歳」と叫び、そのミックスされた酒を注文するときCocktail(カック・テール)といって注文するようになった。

 3)ドック・テール説
 イギリスのヨークシャー地方では、純血種の馬と区別するために雑種の馬の尻尾を切っていた。この尻尾を切った馬をドック・テールと呼んでいて、やがてコック・テールになったという。
 そして混ぜた飲みものを、雑種の馬になぞらえてコック・テールと呼ぶようになった。

 4)コクチェ説
 1795年、カリブ海にあるヒスパニョーラ島のサント・ドミンゴで反乱があり、アントワーヌ・アメデ・ペイショーという男がアメリカに逃げてきた。そして、ニューオリンズで薬局を開店した。目玉商品は二つあった。ひとつはペイショー・ビターズで、カクテルにも入れられた。もうひとつはラムをベースにした卵酒だ。
 この卵酒を当時ニューオリンズに多くいたフランス人は、フランス語でコクチェ(Coquetier)と呼んでいた。元々は病人用であったが、病人以外にもファンが増え、いつのまにかコクチェのような混ぜた飲みものを「コクチャのような飲みもの=コクテール」と呼ぶようになった。

 …3番など、今や誰も支持していないそうだが、疑えばどの説も怪しい話に見えてくる。またどの説も本当だと考えれば、話は愉快であり、酒が愉しくなってくる。さて、あなたはどの話が気に入ったであろうか。