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[ コラム ] 7月-3-2009

 ドイツ語で穀物のことをコルン(Korn)と呼ぶ。ただドイツでコルンといえば、穀物だけでなく、ドイツ特産の蒸留酒も意味している。

 無色透明、クセのない味わいが特徴で、麦類などの穀物が原料の蒸留酒である。穀物(Korn:コルン)を蒸留するところから、酒にコルンブラントヴァイン(Kornbranntwein:穀物でつくったブランデーという意味)の名がつき、略してコルンと呼ばれるようになった。

 ドイツはEU加盟国である。そのEUの規制によれば、コルンとは「小麦、大麦、オーツ麦、ライ麦、ソバだけを発酵、蒸留した酒、または、小麦、大麦、オーツ麦、ライ麦、ソバを原料としたグレーン・スピリッツからつくられる酒であり、いっさい香味づけをしないもの」となっている。

 当然、このEU規制に従ってつくられているのだが、ドイツの国内法ではさらにアルコール度数を規制し、通常のコルンは32度以上と定めている。また、コルンにはドッペルコルン(Doppelkorn、またはKorn-Brannt:コルンブラント)という種類があるが、こちらは38度以上と定めてられている。ドッペルとは、英語のダブルにあたるが、「通常のものよりアルコール度が高い」という意味合いで使われている。

 どんな穀物が主原料に使われているのかは、おおむねラベルによって判断できる。コルンのラベルには、Roggen(ロッゲン:ライ麦)、Weizen(ヴァイツェン:小麦)、Getreide(ゲトレイデ:混合した穀物)などと、主原料を表記したものが多い。

 ちなみに、ドイツではこのコルンのような蒸留酒を、シュナップス(Schnapps)と呼ぶ。無色透明で、アルコール度数の高い蒸留酒をシュナップスという語で総称しているわけである。ドイツの蒸留酒でジンの一種と位置付けられているシュタインヘーガーもシュナップスに含まれる。

 無色透明で、アルコール度数の高い蒸留酒をシュナップスと呼ぶのは隣国オランダも同様である。また北欧スカンジナビア諸国ではアクアビットのこともシュナップスと呼ぶ。もっとも着色したアクアビットも含まれているので、必ずしも無色の蒸留酒ばかりとは限らない。ハンガリーなどの東欧諸国でもシュナップスという語は、蒸留酒をさす語として使われることがある。