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[ コラム ] 2009年06月12日

 テキーラという名称は、メキシコ政府によって法的に規制されている。だから原料は、アガベ・アスール・テキラーナだけである。それ以外のアガベを使ったら、メスカルという名で売らなければならない。ただし、砂糖由来のアルコールを含有させることは可能になっている。

 つまり、アガベ・アスール・テキラーナ由来のアルコールを51%以上含んでいて、残り49%以下が砂糖由来のアルコールであっても、テキーラと呼べることになっているのだ。

 実際には、100%アガベ・アスール・テキラーナでつくったテキーラを出しているメーカーもあれば、砂糖を副材料に使ったテキーラを出しているメーカーもある。

 生産地も法的に規制されている。ハリスコ、ミチョカン、ナヤリット、ガナファト、タマウリパスの5つの州に限定されている。これらの州に隣接するサカテカス、ドゥランゴ、サン・ルイ・ポトシの各州では、アガベ・アスール・テキラーナからつくる蒸留酒は、ピノス(Pinos)という名で売られている。テキーラという名称でないために、日本ではなかなかお目にかかれないのが残念である。



[ コラム ] 2009年06月05日

 テキーラの原料であるアガベ・アスール・テキラーナは、生育に8〜10年ほどかかる。アスール(azul)とは、スペイン語で「青い」という意味で、葉が青緑色をしているところから名付けられたという。さて、どうやってテキーラがうまれるのだろうか。

 生育したアガベ・アスール・テキラーナの葉をそぎ落とし、直径70〜80cm、重さ30〜40kgになった球茎を掘り起こす。形状としては、パイナップルの実を丸くして、何十倍にも大きくしたと考えると分かりやすい。畑から工場に運んだら、半分に割ってから蒸気釜に入れる。昔は石室で蒸気蒸しにしていたらしい。そうやって、茎に含まれるでんぷんやイヌリンなどの多糖類を分解して糖化するのだ。その後、ローラーをかけて粉砕、圧縮し、さらに温水をかけて残った糖分を搾り出し、糖汁液だけをタンクに移して発酵させている。昔は、石臼をロバに引かせて押しつぶしたものを粕ごと発酵させていたようだ。

 蒸留は単式蒸留機で2回行われて、2回目の中留部分だけをとって50〜55度の留液を得る。この留液をウォッカと同様に炭層を通して雑味を除き、ステンレス・タンクあるいはオーク樽に移す。ちなみに55度以上で留液を取ることは、法律で禁じられている。

 現地でテキーラ・ブランコ、英語でホワイト・テキーラと呼ぶ、シャープな香りのテキーラらしい特徴を一番備えているタイプは、ステンレス・タンクに移されて短期熟成をさせ、加水して製品化したものである。

 オーク樽の移されるタイプは、2か月以上樽熟成をさせるとゴールド・テキーラ、別名テキーラ・レポサド(Tequila Reposado)というほのかに樽香を含み、わずかに黄色味を帯びたタイプになる。さらに1年以上熟成させたものは、テキーラ・アニェホ(Tequila Anejo)と呼ばれ、樽の香りが加わってまろやかな風味が特徴になり、テキーラ独特の強靭さや鋭い芳香が薄いタイプになる。



[ コラム ] 2009年05月29日

 テキーラは、アガベ・アスール・テキラーナという品種でつくられる。この品種は、1902年に植物学者ウェーバーによって竜舌蘭の一品種として認定されたもので、メキシコ第2の都市、グァダラハラの近くのテキーラ町周辺の特産品種である。

 一説によるとスペインの統治時代である18世紀半ば、メキシコの西北ハリスコ州、テキーラ村にほど近いアマチタン村の地で大きな山火事があったという。焼け跡には黒焦げになったマゲイ(竜舌蘭)がゴロゴロ転がっていた。辺り一面に漂う芳香を不思議に思った村人が、その一つを押しつぶしてみた。すると中から、チョコレート色の汁がにじみ出てきた。こういう時、人間は好奇心を抑えられない生き物だ。そっとなめてみる。すると上品な甘さがあった。マゲイの株の成分が山火事の熱で糖分に変わっていたのだ。蒸留技術を持つスペイン人はこの汁を絞って発酵させ、蒸留して、無色のスピリッツをつくった。

 その後、蒸留工場は良質のマゲイを求めてテキーラ村に移り、ここがメスカルの本場となった。テキーラの近代的な蒸留が始まったのは1775年。メスカルが初めて国境を越えたのが1873年といわれている。1902年のウェーバーの認定以降、このアガベ・アスール・テキラーナでつくるメスカルは、テキーラ(Tequila)という名で売られることになった。