とp PBO:NPO法人 プロフェッショナル・バーテンダーズ機構
SUNTRY ザ・バーテンダーアワード WRLD CLASS 2024
[ コラム ] 2009年01月16日

 ジンは、1660年にオランダ・ライデン大学のシルヴィウス博士(Dr.Sylvius:本名Franz de la Boe フランツ・デ・ラ・ボエ、1614-1672)によってつられた薬用酒である。植民地での熱病の特効薬、利尿剤としてつられたという。  その中身は、当時、利尿効果があるとされていたジュニパー・ベリー(Huniper Berry:杜松の実)をアルコールに浸漬して蒸留したものである。この薬用酒は、ジュニパー・ベリーのフランス語読みであるジュニエーヴル(Genievre)と名付けて販売された。

 すでに蒸留酒を飲む習慣は徐々に広がりつつあったが、簡単な構造のポット・スチルで作られていたために雑味の多い酒がほとんどであった。さわやかな香りを持つジュニエーヴルは、当時存在した他のジュニパー・ベリー風味の酒とともに飲用が広まっていったのである。そして名前もオランダ語でイェネーフェル(Genever)やイェネーファ(Geneva)と呼ばれるようになった。

 このイェネーフェルは、オランダ公ウィリアムが1689年にイギリス国王に迎えられるとともにイギリスにも広がり、特にロンドンで爆発的に流行した。そして、イギリスではジュニエーヴルが短縮されて「ジン(Gin)」と呼ぶようになった。これが「ジン」と呼ばれるようになった由来でもある。

 19世紀に入ると連続式蒸留機が発達し、イギリスのジンはクセのないライトな風味を持つ洗練された新しい酒として進化していく。そして相変わらずポット・スチルでつられるイェネーフェルと区別するために、ブリティッシュ・ジン、あるいは主産地の名前をとってロンドン・ジンと呼ばれるようになった。

 ジンは、それからアメリカに渡っていく。そしてカクテルベースとして一躍脚光を浴び、世界的に有名になった。こうしたジンの歴史が、まさに「ジンは、オランダ人が生み、イギリス人が洗練し、アメリカ人が栄光を与えた」といわれる所以である。現在、ジンは世界各国でつくれているが、そのほとんどがロンドン・ジンと同じタイプのドライ・ジンである。

注)ドイツ語およびフランス語特有の文字は一部省略して表記しています。



[ コラム ] 2009年01月09日

 謹賀新年。昨年はあまり良いニュースがなかったが、今年が良い一年になることを願うばかりである。さて、昨年はリキュールに関する話を中心にしてきた。今年はしばらくスピリッツの話をしていきたい。最初に取り上げるスピリッツは「ジン」である。

 ジンは、穀物を原料とし、糖化、発酵、蒸留の工程を経て、草根木皮とともに再蒸留させた酒である。狭義では、無色透明で、さわやかな香りと切れ味のよい風味を持つ辛口の酒となる。広義では、無色透明でも甘味を加えて飲みやすくしたものや、フルーツの香味と色を添えてリキュール・タイプにしたものもある。

 単にジンというときは狭義の意味で、無色透明で辛口のジンを意味する。広義の中で他と区別するために「ドライ・ジン」とも称する。この「ドライ・ジン」がジンの主流である。

 ジンの主な種類(別途個別にコラムで解説する予定)
★ドライ・ジン(Dry Gin)
★オランダ・ジン(Genever)
★シュタインヘーガー(Steinhager)
★オールド・トム・ジン(Old Tom Gin)
★フレーバード・ジン(Flavored Gin)

 次回は、ジンの歴史について触れたいと思う。

注)ドイツ語特有の文字は一部省略して表記しています。



[ コラム ] 2008年12月26日

 今年最後のコラムである。リキュールを効果的に取り上げている小説を紹介して締めにしたい。年末年始の休みを利用してリキュールへの造詣を深めてみるのも一興だと思う。

 すでに絶版になっている本もある。ここに紹介したものは、アマゾンといったネット利用の書籍販売で古書として売られていることを確認してあるので、検索してご覧いただけると思う。ただし、ご購入は自己責任で。では、よいお年をお迎えください。

★世界異端の文学(4)「さかしま」
J.K.Huysmans (著), 澁澤 龍彦 (翻訳)

リキュールのことを正面から取り上げ、リキュールに関する深い洞察を示した本と評価されている。

387ページ
出版社: 桃源社 (1966)
ASIN: B000JAAT7U
発売日:1966
http://www.amazon.co.jp/さかしま-1966年-世界異端の文学〈4〉-J-K-Huysmans/dp/B000JAAT7U/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1227083388&sr=8-1

★Hayakawa Pocket Mystery 171 (新書)「美の秘密」
ジョセフィン・テイ (著), 河田 清史

1950年代のロンドンの富裕階級の飲んでいた酒が分かる。

224ページ
出版社: 早川書房 (1954/11/15)
ISBN-10: 4150001715
ISBN-13: 978-4150001711
http://www.amazon.co.jp/美の秘密-Hayakawa-Pocket-Mystery-171/dp/4150001715/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1227084304&sr=1-1

★「モンマルトルの不良少年」
ロベール・サバチェ (著), 橋本 一明 (翻訳)

1950年代のパリ、モンマルトルのカフェの様子が分かる。

226ページ
出版社: 新潮社 (1958)
ASIN: B000JAUVQY
発売日: 1958
http://www.amazon.co.jp/モンマルトルの不良少年-1958年-ロベール・サバチェ/dp/B000JAUVQY/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1227084428&sr=1-1

★(集英社文庫 11-A)「タルキニアの子馬」
マルグリット・デュラス (著), 田中 倫郎 (翻訳)

カンパリを効果的にストーリー展開に使われている。

304ページ
出版社: 集英社 (1977/10)
ISBN-10: 4087600157
ISBN-13: 978-4087600155
発売日: 1977/10
http://www.amazon.co.jp/タルキニアの小馬-集英社文庫-11-マルグリット・デュラス/dp/4087600157/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1227084774&sr=1-1

★「アブサン・聖なる酒の幻」
クリストフ バタイユ (著), Christophe Bataille (原著), 辻 邦生 (翻訳), 堀内 ゆかり (翻訳)

アブサンを描いた小説として特に有名。

145ページ
出版社: 集英社 (1996/10)
ISBN-10: 4087732592
ISBN-13: 978-4087732597
発売日: 1996/10
http://www.amazon.co.jp/アブサン・聖なる酒の幻-クリストフ-バタイユ/dp/4087732592/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=books&qid=1227086324&sr=1-3

★(ハヤカワ文庫 SF 464)「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」
カート・ヴォネガット・ジュニア (著), 浅倉 久志 (翻訳)

サザン・カンフォートが小説の土台として使われている。

307ページ
出版社: 早川書房 (1982/02)
ISBN-10: 4150104646
ISBN-13: 978-4150104641
発売日: 1982/02
http://www.amazon.co.jp/ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを-ハヤカワ文庫-SF-464-カート・ヴォネガット・ジュニア/dp/4150104646/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1227086755&sr=1-1

…リキュールが登場する小説は他にも沢山ある。「これが私の一番だ」と推薦されるものがあれば、ぜひお知らせいただきたい。情報が届き次第、掲載を検討させていただくつもりである。