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[ コラム ] 2008年07月09日

 もちろん、1630年頃にインド人によって発明されたというパンチ(Punch)の話である。17世紀後半にインド在住の東インド株式会社のイギリス人たちの間に根をおろし、イギリス本国に紹介されて家庭にも溶け込むようになったという話は有名である。
 インド人の蒸留酒であるアラックをベースに、砂糖、ライム、スパイス、水の5つの材料を大きな器でミックスし、注ぎ分けて飲む飲みものだった。この「5つ」を意味するヒンドスタニー語(近代インド語)がパンジ(Panji)で、それが英語のパンチになったと言われている。
 このパンチにまつわる話で、もっとパンチの効いた話があるのをご存じだろうか。
 1694年11月26日、スペイン南部、バレンシアに近いアリカンテ村の自分の家に将校たちを招いた人物。のちに元帥になったイギリス海軍地中海艦隊のエドワード・ラッセル司令官は、庭に大きな穴を掘った。そしてなんとラム250ガロン、マラガ・ワイン225ガロン、ライム・ジュース20ガロン、レモン2500個分のジュース、砂糖1300ポンド、ナツメグ5ポンド、水500ガロンを使ってパンチを作ったというのだ。
 ガロン! しかも1000ガロン! 例えは悪いが、欧米の家の裏庭にある直径3メートルぐらいのプールの容量に近い。なんとも豪気なものである。のちにノックアウト・パンチ(Knockout Punch)と呼ばれるようになった話であるが、面白いというか愉快なエピソードである。

※ミニ知識:ガロン(gallon, 記号: gal)
ヤード・ポンド法の容積の単位。国や用途によって定義が異なるが、大体3.5〜4.5リットルの範囲内。

1ガロンは4クォート (quart) 。
8ガロンを1ブッシェル (bushel)。
36(英)または42(米)ガロンを1バレル (barrel) という。

現在用いられている種類。
1)英ガロン (Imperial gallon) – 1パイントを20液量オンスとしたときの8パイント。
  正確に4.546 09リットル(231立方インチ)に等しい。
2)米国液量ガロン (U.S. fluid gallon) – 1パイントを16液量オンスとしたときの8パイント。
  正確に3.785 411 784リットルに等しい。
3)米国乾量ガロン (U.S. dry gallon) – 正確に4.404 842 803 2リットル(268.8025立方インチ)に等しい。



[ コラム ] 2008年07月01日

 カクテルの語源には、メキシコ説、アメリカ説、イギリス説、フランス説といろいろと伝えられているが、どれも定説とはなっていない。
 どの説を信じるかは自由だが、1748年、ロンドンで出版された小冊子『ザ・スクァイア・レシピーズ(The Squire Recipes)』の中に「Cocktail」という単語が登場しているので、その頃から言われ始めたことは確かなようだ。
 主な説を4つ紹介しよう。

 1)木の枝説
 昔、メキシコのユカタン半島にあるカンペチェという港町での話である。イギリス船の船員たちが上陸して酒場に入ってきた。店のカウンターの中では少年が何かをしている。よく見ると少年はきれいに皮をむいた木の枝で、うまそうなミクスド・ドリンクをつくって、土地の人に飲ませていた。
 当時のイギリス人はストレートでしか酒を飲まなかったので、とても珍しく思った。ひとりの船員が「それは何だい?」と少年に聞いてみた。ところが、少年はそのときに使っていた木の枝の名前を聞かれたと勘違いしてしまったのである。そこで「これは、コーラ・デ・ガジョ(Cola de gallo)です」と答えてしまった。
 コーラ・デ・ガジョーとはスペイン語で「オンドリの尻尾」の意味である。少年は木の枝の形が似ているので、そんな愛称で呼んでいたのだ。
 このコーラ・デ・ガジョーを英訳すると、テール・オブ・コック(Tail of cock)だ。このとき以来、ミクスド・ドリンクのことはテール・オブ・コックと呼ばれるようになり、やがてカクテル(Cocktail)となった。

 2)鶏尾説
 アメリカ独立戦争の最も激しかった頃の話だ。ニューヨーク市の北、エムスフォードというイギリスの植民地に『四角軒』というバーがあった。店をやっていたのはベティー・フラナガンという美人経営者だ。
 独立軍の兵士たちに酒をふるまい、力づけていた彼女は、ある日、反独立派の大地主の家に忍び込んだ。そしてみごとな尻尾を持つ雄鶏を盗み出し、ロースト・チキンにして兵士たちにふるまった。何も知らない兵士たちはチキンをつまみに酒を飲んだ。さておかわりをとバック・バーを見ると、ミックスされた酒のビンに雄鶏の尻尾が差してあった。そこで兵士たちはチキンの正体を知り、「カクテル万歳」と叫び、そのミックスされた酒を注文するときCocktail(カック・テール)といって注文するようになった。

 3)ドック・テール説
 イギリスのヨークシャー地方では、純血種の馬と区別するために雑種の馬の尻尾を切っていた。この尻尾を切った馬をドック・テールと呼んでいて、やがてコック・テールになったという。
 そして混ぜた飲みものを、雑種の馬になぞらえてコック・テールと呼ぶようになった。

 4)コクチェ説
 1795年、カリブ海にあるヒスパニョーラ島のサント・ドミンゴで反乱があり、アントワーヌ・アメデ・ペイショーという男がアメリカに逃げてきた。そして、ニューオリンズで薬局を開店した。目玉商品は二つあった。ひとつはペイショー・ビターズで、カクテルにも入れられた。もうひとつはラムをベースにした卵酒だ。
 この卵酒を当時ニューオリンズに多くいたフランス人は、フランス語でコクチェ(Coquetier)と呼んでいた。元々は病人用であったが、病人以外にもファンが増え、いつのまにかコクチェのような混ぜた飲みものを「コクチャのような飲みもの=コクテール」と呼ぶようになった。

 …3番など、今や誰も支持していないそうだが、疑えばどの説も怪しい話に見えてくる。またどの説も本当だと考えれば、話は愉快であり、酒が愉しくなってくる。さて、あなたはどの話が気に入ったであろうか。



[ コラム ] 2008年06月20日

 今回で3回目。いよいよ現代に入ってきた。1980年代以来、多くの新しいレシピが登場する。どれもすぐに国際舞台へ顔を出すようになった。そんな時代の変化とともに人の好みも変わってきている。トワイライト・タイムに安心して数杯飲み干せる、低アルコールのカクテルが人気だそうだ。そんな新しい客に合わせたカクテルが今夜も生まれているのだろう。定番となって新たに歴史に名を刻むカクテル。出会いたいものだ。

1950年〜1960年

★ブラック・ルシアン
1950年頃、おそらくブリュッセルのメトロポール・ホテルでグスタフ・トップスが創作。

★ピニャ・カラーダ
1950年代初めに、プエルト・リコに登場。カリブ・ヒルトン・ホテルのバーテンダー、ラモン・マレロ・ペレスの作品。

★タマナコ・ドライ
1950年代初めに、カラカスのタマナコ・ホテルでジャック・ヘブラールが創作。元はジャッカルティーニとして知られる。

★キール
1904年、ディジョンで創作。ヴァン・ブラン・カシスを改名(1951年)

★ゴールデン・ドリーム
カリフォルニア州マリンランドのルロイ・シャロンが創作。

1960年〜1970年

★ブルー・ラグーン
1960年、パリのハリーズ・バーのアンディ・マッケルホーンが創作。

★スクリュードライバー
1960年代初めに、アメリカ全土で人気沸騰。

★ハーベイ・ウォールバンカー
1968年と1970年の間に、カリフォルニア州に登場。マンハッタン・ビーチのパンチョズ・バーの作品。

★テキーラ・サンライズ
1960年代末に、アメリカで創作。

★バナナ・ダイキリ
トレーダー・ヴィックが創作。

★ボサ・ノバ
バハマのナッソー・ビーチ・ホテルのセシル・E・ロバーツが創作。

★ジョー・カヌー
キングストンのシェラトン・ホテルでD・R・ルナンが創作。元はジョンカヌー・スクリュードライバーと呼ばれる。

★マルガリータ
アメリカで広まる。発祥地不明。

★モンテゴ・ベイ
トレーダー・ヴィックが創作。

★ムラータ
キューバで創作。ホセ・マリア・ヴァスケスの作品。

1970年〜1980年

★ブルー・ハワイアン
1970年代初め、アメリカで創作。

★ケープ・コッダー
1970年代初め、アメリカで創作。

1980年〜1990年

★アップル・サンライズ
1980年、ミュンヘンのチャールズ・シューマンが創作。

★ミッドナイト・ムーン
1982年、パリでコリン・ピーター・フィールドが創作。

★アリスト
1984年、ドイツのパッソーでデュシャン・ティストラーが創作。

★キャロル・チャニング
1984年、ロンドンでディック・ブラッドセルが創作。

★クリエイティビティ
1984年、チューリッヒでピーター・ロスが創作。

★レディー・キラー
1984年、チューリッヒのクロネンハル・バーでピーター・ロスが創作。

★ベーシック
1986年、ドイツのパッソーでデュシャン・ティストラーが創作。

★ロング・アイランド・アイスド・ティー
★パープル・フッター
★セックス・オン・ザ・ビーチ#2
1980年と1987年の間に、サンフランシスコのバルボア・カフェで創作。

★ブランブル
ロンドンでディック・ブラッドセルが創作。

★ファジー・ネーブル
サンフランシスコに登場。パット・オシアのマッド・ハッターの作品。

1990年〜

★ブラック・ウィドー
1992年、ニューヨークで「The Craft of the Cocktail(カクテルの技術)」の著者、デール・デグロフが創作。

★ウー・ウー
1993年、サンフランシスコのジェリーズ・サパー・クラブで創作。

★アップル・ピラー
★セレンディピティ
1994年、パリでコリン・ピーター・フィールドが創作。

★アネホ・ハイボール
1995年、ニューヨークで「The Craft of the Cocktail(カクテルの技術)」の著者、デール・デグロフが創作。

★ブルゴス
1995年、パリでコリン・ピーター・フィールドが創作。

★ジンジャー・シャンパン
1995年、パリ(あるいはベンデリッター)でコリン・ピーター・フィールドが創作。

★ビーム・ミー・アップ・スコッティ
1996年、ベルリンのハドスン・バーのウィリー・ハースが創作。

★ケーブル・カー
1996年、サンフランシスコでトニー・アバウーガニムが創作。

★ダスティ・ローズ
1996年、ニューヨークで「The Craft of the Cocktail(カクテルの技術)」の著者、デール・デグロフが創作。

★トロピカーナ
1996年、ベルリンのハドスン・バーのウィリー・ハースが創作。

★マキシムズ・コーヒー
1997年、ブリュッセルで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★フィエスタ
1997年、パリでコリン・ピーター・フィールドが創作。

★エクスプレッソ・マティーニ
1998年、ロンドンでディック・ブラッドセルが創作。

★ジャスト・トライ
1998年、ミュンヘンのネグロニ・バーでマウロ・マジョウが創作。

★アガベ・パンチ
1999年、ニューヨークで「The Craft of the Cocktail(カクテルの技術)」の著者、デール・デグロフが創作。

★アップル・スパークル
1999年、フランスで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★チョコレート・ブリス
1999年、ロンドンで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★バカラ
1999年、チューリッヒでピーター・ロスが創作。

★ブレックファースト・マティーニ
1999年、ロンドンで「Classic Cocktail(クラシックカクテル)」の著者、サルヴァトーレ・カラブリーズが創作。

★マンゴー・スパークル
1999年、フランスで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★ベティ・ブルー
2000年、ミュンヘンのネグロニ・バーでマウロ・マジョウが創作。

★ジー・ジー
2000年、ロンドンで「Classic Cocktail(クラシックカクテル)」の著者、サルヴァトーレ・カラブリーズが創作。

★アップル・マティーニ
2000年頃、アメリカはおそらくニューヨークに登場。

★アジアン・パッション
★パッション・クーラー
2000年、フランスで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★ディー・ライト
2000年、シドニーで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★エル・ウルティモ
2000年、ボコタで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★フレンチ・スプリング・パンチ
★ルシアン・スプリング・パンチ
★トリークル
2000年と2003年の間に、ロンドンでディック・ブラッドセルが創作。

★アンバー・ツイスト
2001年、ソウルで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★クロックワーク・オレンジ
2001年、パリでコリン・ピーター・フィールドが創作。

★デルマーバ
2001年、ロスアンジェルスで「カクテル博士」のニックネームで知られるテッド・ヘイが創作。

★ジャム・ダイキリ
2001年、ヴァレンシア(スペイン)でラファエル・バレステロスが創作。

★メリング
2001年、ロスアンジェルスで「テッド・ヘイが創作。

★エボルーション
2002年、ヴァレンシア(スペイン)でラファエル・バレステロスが創作。

★フランシス・ザ・ミュール
2002年、ロスアンジェルスで「テッド・ヘイが創作。

★ゴッサム
2002年、ワシントン州シアトルで「ドリンクボーイ」としても知られるロバート・ヘスが創作。

★ハイスキベル
2002年、ヴァレンシア(スペイン)でラファエル・バレステロスが創作。

★ツイスティン
2002年、チューリッヒでピーター・ロスが創作。

★カシシーナ
★クランベリー・カラーダ
★ミルキー・マンゴー
★マイ・スカイ
★プランターズ・パンチレス
★パープル・パッシュ
★レッドウッド
2002年、フランスで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★ヨーロピアン・ビューティ
★ホンダリビア
2003年、ヴァレンシア(スペイン)でラファエル・バレステロスが創作。

★レモニー・スニケット
2003年、ロスアンジェルスで「テッド・ヘイが創作。

★ベリー・ブラッシュ
★バウンティ・ボート
2003年、フランスで「LAROUSSE COCKTAILS(ラルース新カクテル事典)」の著者、フェルナンド・カステロンが創作。

★コスモポリタン
サンフランシスコのジェリーズ・サパー・クラブで創作。

★プラジャ・デル・マル
ロンドンのナヴァホ・ジョーが創作。