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[ コラム ] 2009年05月22日

 ジン、ウォッカ、ラムと並ぶ4大蒸留酒のひとつ。世界で広く知られているスピリッツの中で、もっとも個性豊かで、かつ飲む人がロマンティックな印象を持っているスピリッツ。さて、何を思い浮かべるだろうか。

 答えは、テキーラである。意外にも、4大蒸留酒のひとつとして数えられるようになったのは比較的新しい。1968年のメキシコ・オリンピックによって、その存在が世界的に知られるようになったという。

 テキーラは竜舌蘭(リュウゼツラン)というビガンバナ科に属する多肉植物の一種が原料である。メキシコの竜舌蘭には酒の原料としては、大別してアガベ・アメリカーナ(Agave Americana)、アガベ・アトロビレンス(Agave Atrovirens)、アガベ・アスール・テキラーナ(Agave Azul Tequilana)の3つの品種がある。テキーラは、この中のアガベ・アスール・テキラーナという品種の茎を糖化、発酵、蒸留してつくられる。

 ちなみに、アガベ・アメリカーナとアガベ・アトロビレンスは、その樹液を発酵させて、プルケ(Pulque)と称して飲まれたり、さらに蒸留してメスカル(Mezcal、Mescal)という名で飲まれている。プルケは、トルテカ、アステカ文明時代から土着の人々の間で飲まれていた酒で、今でもメキシコ・シティ周辺の中央高地地帯で広く飲まれている。メスカルは、アカプルコなど南部メキシコの太平洋岸一帯とメキシコ・シティ以北の中部メキシコといった、プルケの生産地より海抜が低く温度の高い地帯でつくられている。

※メキシコでは竜舌蘭を、マゲイ(Maguey)あるいは植物学者リンネの命名からアガベ(Agave)と呼んでいる。



[ コラム ] 2009年05月15日

 カシャーサ、アラック、アグアルディエンテ・デ・カーニャ、これらの名前をご存じなら相当のラム通である。ラムに関する最後のコラムは、ラムの亜種について。

 カシャーサ(Cachaca:別名ピンガ Pinga)はブラジルでつくられているサトウキビが原料のスピリッツ。サトウキビの搾り汁を濁ったまま発酵し、単式蒸留を行う。樽熟成の後に、活性炭処理をして無色透明なまま製品化する。副生成分が多く、重い酒質である。ブラジルではあくまでカシャーサであり、ラムではないという認識になっている。

 アラック(Arrack)の中には東南アジアでつくられるもので、糖蜜を発酵し、蒸留を行ったアロマティックな香り高いラムと呼べるものがある。

 アグアルディエンテ・デ・カーニャ(Aguardiente de Cana)は、スペインや南米各地でつくられるサトウキビを原料としたスピリッツであるが、これも地酒的なラムと考えられる。

 ちなみに糖蜜を95度以上に蒸留したニュートラル・スピリッツは、原料用アルコールとして日本の清酒や焼酎にも使用されている。



[ コラム ] 2009年05月08日

 ライト・ラム、ヘビー・ラム、ミディアム・ラム、今回はそれぞれの産地についての話である。

 ライト・ラムづくりの発端になった連続式蒸留機の導入が19世紀の半ば過ぎ。その生産に当初から取り組んだのが、キューバに工場を持っていたバカルディ社である。それから主にスペイン系の植民地に広がっていき、プエルトリコ、バハマ、キューバ、メキシコなどが今でもライト・ラムの主生産地となっている。

 ヘビー・ラムは、イギリス系植民地で発展してきた。ジャマイカ、ガイアナなどが主生産地である。

 ミディアム・ラムは、フランス系植民地で発展してきた。フランスの海外県であるマルチニック島、グァドループ島などが主生産地になっている。

 ちなみにフランス系ラムのタイプは2つに分かれる。アグリコール(agricole:農業生産品の意)とアンデュストリエル(industriel:工業生産品の意)の2つである。アグリコールは、サトウキビの搾り汁をそのまま水で薄めてつくったラム。アンデュストリエルは、搾り汁から砂糖の結晶を除去した糖蜜からつくったラム。アグリコールの表記のないラベルのラムは、ほとんどがアンデュストリエルである。両者ともにオーク樽で3年以上熟成したものは、ヴィユー(vieux:オールドの意)と表記できるようになっている。