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[ コラム ] 2008年10月24日

 1533年の初秋、フィレンツェの名門メディチ家の娘カテリーナ・ディ・メディチ(Caterina di Medici、フランス名カトリーヌ・ド・メディシス:Catherine de Medicis、1519-1589)がフランス王の次男アンリ・ドルレアン(後の国王アンリ2世、HenriII、1515-1559)に嫁いだ。

 その時にカテリーナはリキュールの製法を心得た従者を連れて行き、フランスの嫁ぎ先でもリキュールを作らせた。そのリキュールがポプロ(Populo)である ブランデーにムスク(じゃこう)、アニス、シナモンなどで香りをつけ、甘味を添えたものだ。

 これを契機として、リキュールは甘美な悦楽の媚薬としてフランス宮廷内で飲まれるようになったそうだ。さらに政敵や憎悪する縁者を倒すために毒薬を混入したリキュールを利用するような退廃的な風習まで生まれてしまった。

 2回に亘って、イタリア起源のリキュールの逸話を掲載した。リキュールが薬酒的な役割から徐々に嗜好的な役割へ変わっていった時代である。



[ コラム ] 2008年10月18日

 前回までちょっと固い話が続いたので、リキュールの歴史にまつわる楽しい話をご用意した。
 15世紀、北イタリア、ヴェネチアとヴェローナの中間の町パドヴァの話である。パドヴァにミケーレ・サヴォナローラ(Michele Savonarola:1384-1462)という一人の医師がいた。彼は、さる病弱な婦人に生命の水と讃えられているブランデーを薬として勧めたが、その婦人は飲みたがらなかった。

 そこでサヴォナローラ医師は、ブランデーにローズの花の香りとモウセンゴケ(sundew)の味を溶かし込んだリキュールを開発し、ロゾリオ(Rosolio)と名付けて勧めてみた。その婦人は気に入ってこれを薬として飲むようになったという。これがリキュール・ロゾリオの誕生物語である。

 ロゾリオとは、モウセンゴケのイタリア古語ロゾリ(rosoli)に由来する。このロゾリも、元はラテン語で「露」を意味するロス(ros=dew)と、同じく「太陽」を意味するソリス(solis=of the sun)を由来とする言葉だ。つまり、ロゾリオとは「太陽のしずく」といった意味になる。

 ロゾリオの評判は、パドヴァの町に広がり、やがてイタリアでつくられる薬酒系のリキュールは、いずれもロゾリオと称されるようになり、イタリア産のリキュールの代名詞になった。ちなみに1480年ごろ、ナポリの南サレルノでは、こうしたロゾリオが薬酒として盛んにつくられていたようである。



[ コラム ] 2008年10月10日

「リキュールの原料」のコラムで、「フルーツは、国、地方によって呼び名が違っている。したがって、同じフルーツを使ったリキュールでも生産国が違えば名称が違う」とご紹介した。どう違うのか、代表的なものをピックアップしてみよう。

すもも類
(英語名)plum:プラム
(フランス語名)prune:プリュン
(ドイツ語名)pflaume:プラウメ

黄色すもも
(英)yallow plum:イエロープラム
(仏)mirabelle:ミラベル
(独)Mirabelle:ミラベッレ

紫色すもも
(英)violet plum:バイオレット・プラム
(仏)quetsche:クェッチュ
(独)Zwetsch(g)e:ツヴェッチェ(〜チュゲ)

こけもも
(英)blueberry/bilberry:ブルーベリー/ビルベリー
(仏)myrtille:ミルティーユ
(独)Heidelbeere:ハイデルベーレ

木いちご
(英)raspberry:ラズベリー
(仏)framboise:フランボワーズ
(独)Himbeere:ヒンベーレ

黒いちご
(英)blackberry:ブラックベリー
(仏)mure sauvage:ミュール・ソヴァージュ
(独)Brombeere:ブロンベーレ

赤すぐり
(英)red currant:レッド・カラント
(仏)groseille rouge:グロゼーユ・ルージュ
(独)Johannisbeere:ヨハニスベーレ

白すぐり
(英)white currant:ホワイト・カラント
(仏)groseille blanche:グロゼーユ・ブランシュ
(独)Weissen Johannisbeere:ヴァイセン・ヨハニスベーレ

黒すぐり
(英)black currant:ブラック・カラント
(仏)cassis/groseille noire:カシス/グロゼーユ・ノアール
(独)Schwarze Johannisbeere:シュヴァルツェ・ヨハニスベーレ

オランダいちご
(英)strawberry:ストロベリー
(仏)fraise:フレーズ
(独)Erdbeere:エルドベーレ

さくらんぼ
(英)cherry:チェリー
(仏)cerise:スリーズ
(独)Kirsche:キルシェ

オレンジ
(英)orange:オレンジ
(仏)orange:オランジュ
(独)Orange:オランジェ

レモン
(英)lemon:レモン
(仏)citron:シトロン
(独)Zitrone:ツィトローネ

グレープフルーツ
(英)grapefruit:グレープフルーツ
(仏)pamplemousse:パンプルムース
(独)Pampelmuse:パンペルムーゼ

西洋梨
(英)pear:ペア
(仏)poire:ポワール
(独)Birne:ビルネ

もも
(英)peach:ピーチ
(仏)peche:ペーシュ
(独)Pfirsich:フィルジッヒ

あんず
(英)apricot:アプリコット
(仏)abricot:アブリコ
(独)Aprikose/Pflaume:アプリコーゼ/プラウメ

りんご
(英)apple:アップル
(仏)pomme:ポム
(独)Apfel:アップェル

パイナップル
(英)pineapple:パイナップル
(仏)ananas:アナナ
(独)Ananas:アナナス

注)フランス語特有の文字は一部省略して表記しています。