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[ コラム ] 2008年09月19日

 リキュールを生み出したのは中世の錬金術師である(詳しくは前回のコラムを)。その製法は、中世の修道院の僧侶に受け継がれた。僧侶たちは、朝夕の勤行の間に付近の野山から薬草や香草を集め、成分をアルコールに抽出していたという。こうして修道院ごとに特徴のあるリキュールが生み出されていたようだ。とくにフランスでは盛んで、今でもその流れをくむリキュールがフランス各地で製造されている。

 その後、近世の大航海時代になると新大陸やアジア産の植物、とくに香辛料(スパイス)や砂糖が利用できるようになって、リキュールの原料は一挙に多様化してきた。

 さらに、18世紀頃になると医学が進歩し始め、蒸留酒やリキュールに対して医学的効果を求めることがなくなってきた。そのため、薬酒的なものに代わってフルーツの香味を主体とした甘美なリキュールが台頭してきた。代表的な例が、17世紀末期にオランダで生まれたキュラソーというオレンジ風味のリキュールだ。

 以降、各種フルーツの香味を活かしたリキュールが次々に開発されことになる。

 19世紀後半には、イギリスで開発された連続式蒸留機の普及によって、高濃度アルコールをベースに洗練された味わいのリキュールが作られるようになる。現代では、食品化学工業の高度な発達も加わって、高品質のリキュールが数多く製品化されている。

 ちなみに日本にリキュールが紹介されたのは豊臣秀吉の時代らしい。当時の利久酒がリキュールだともいわれている。史実としてハッキリしているのは1853年、黒船来航の時である。「米国船サクスハエナ号に浦賀奉行を迎えたペリー提督は、さまざまな酒を出してもてなしたが、とりわけリキュールは一滴も残さず飲みほされた」との記録があるそうだ。

 種類が多く、なかなか全貌を把握しづらいリキュールの世界だが、歴史的な流れはすんなりと頭に入っていく。この一杯のカクテルにも、さまざまな歴史が潜んでいる。そう考えると、バーで過ごす時間とは、なんとも贅沢な時間である。



[ コラム ] 2008年09月12日

 リキュールの起源は、紀元前。古代ギリシャの医聖ヒポクラテス(Hippokrates, B.C.460〜B.C.375頃)が作ったといわれている。ワインに薬草を溶かし込んで、一種の水薬をつくったということらしい。
 しかし、以前このコラムの「日欧米のリキュール定義」で書いたように、欧米では醸造酒ベースの混成酒は醸造酒の一種と見なすのが一般的である。つまり、ビールをベースにしたらビールの一種、ワインをベースにしたらワインの一種と考え、リキュールはスピリッツをベースにしたものと考えられている。では、スピリッツをベースにした混成酒を創造したのは誰だか、ご存じだろうか。

 現在のリキュールの起源は、ブランデーの祖でもあるスペイン生まれの医者兼錬金術師のアルノー・ド・ヴィルヌーヴ(Arnaud de Villeneuve, 1235〜1312年頃)と、ラモン・ルル(Ramon Lull, 1236〜1316年頃)の二人だとされている。スピリッツにレモン、ローズ、オレンジの花、スパイスなどの成分を抽出して作ったらしい。

 蒸留酒づくりは、中世に錬金術師たちが生み出した技法である。ラテン語でアクア・ビテ(Aqua vitae, 生命の水)と呼んで、生命維持のための薬酒として蒸留酒は用いられていた。そして、さらに生命維持効果のある霊酒を作りだそうとして、蒸留の際に各種薬草や香草類を加える工夫を行った。植物の有効成分が溶け込んでいるので、こちらのほうはラテン語でリケファケレ(Liquefacere, 溶け込ませる)と呼んだ。

 このリケファケレがリキュール(Liqueur)という名称の語源になっている。リキュールは中世の錬金術師たちが生み出した蒸留酒のバリエーションとして生まれたのだ。



[ コラム ] 2008年09月05日

 グラスの種類を紹介する3回シリーズ。最後の3回目は、ワイン・グラス(Wine Glass)、サワー・グラス(Sour Glass)、ゴブレット(Goblet)、ビアー・グラス(Beer Glass)の4つである。

 ワイン・グラス(Wine Glass)
 国や地方の風俗、色や味といったワインのタイプによって、さまざまな形や大きさがある。バーにおいては一般的に以下の条件を満たしているものが理想といわれる。
 1)ワインの色が楽しめる無地無色透明なもの
 2)チューリップのように、グラス上部が内側にややカーブしているもの
 3)口径が6cm以上あるもの
 4)容量が200ml以上のもの
 5)グラスの肉厚が薄手のもの
 この条件を満たしたグラスに、ワインを1/2、または2/3ほど入れるのが理想とされている。

ワイングラス


 サワー・グラス(Sour Glass)
 サワーという一種のカクテルを飲むためのグラス。日本やアメリカでは脚つきが一般的だが、底が平らなタイプもある。
 容量は120mlが標準。

サワーグラス


 ゴブレット(Goblet)
 タンブラーに脚をつけたもの。ビールやソフト・ドリンク、氷をたっぷりと使ったカクテルなどに使用する。
 容量は300mlが標準。もう少し大きなものもよく使われる。

ゴブレット


 ビアー・グラス(Beer Glass)
 ビール専用のグラス。別名、ピルスナー・グラスともいう。ビール・ジョッキ以外のグラスの中では、色、香り、泡立ち、味わいを楽しむのに適している。

 以上、よく知られているグラスのタイプを紹介してきた。画像がないと、文字だけではなかなか伝わらない。しかし、画像があっても、持った感触は伝わらない。だからといって、百貨店へ行って実際に持ってみても、本当の良さは分からない。やはり、ドリンクあってのグラスである。バーに行ってこそ、グラスを持つ良さが分かるというものだ。