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[ コラム ] 2009年07月24日

 焼酎も内容的にはれっきとしたスピリッツである。が、酒税の関係で酒税法上は別の区分になっている。それでも日本のスピリッツとして取り上げてみたい。

 焼酎は、アルコール含有物を蒸留した日本産の蒸留酒で、甲類と乙類の二つに分類されている。

 甲類は、アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したもので、そのアルコール度数が36度未満のものをいう。精巧な連続式蒸留機を使用するので、ライトな風味の酒になる。コストの点から糖蜜を原料に使うことが多いが、イモ類や穀類を使うこともある。これらを発酵・蒸留して得られたアルコール度数85〜97度の蒸留液に加水して、36度未満で製品化する。

 乙類は、アルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機で蒸留したもので、アルコール度数が45度以下のものである。蒸留機としては、現実には、単式蒸留機が使われている。本格焼酎とも呼ばれて、九州南部や南西諸島が主な産地となっている。単式蒸留機を使うため、エチル・アルコール以外の成分も数多く含まれ、原料の違いがそのまま風味の違いとなって出てくる。一般的に風味はヘビーである。

 原料の違いから焼酎乙類を区分すると、泡盛、もろみ取り焼酎(芋焼酎、米焼酎、麦焼酎、蕎麦焼酎、黒糖焼酎)、粕取り焼酎の3タイプに分かれる。

 泡盛は、言わずと知れた沖縄特産。黒麹菌を繁殖させた米麹だけでつくられる。土中に埋めたカメで長期熟成させたものをクース(古酒)といって特に珍重されている。

 もろみ取り焼酎は、米麹のもろみに、芋、米、麦、蕎麦、黒糖糖蜜などを加え、発酵・蒸留したもの。芋焼酎なら鹿児島県、米焼酎は球磨焼酎の熊本県球磨地方、麦焼酎なら壱岐、蕎麦焼酎の宮崎県、黒糖焼酎は奄美大島、など各地の特産となっているものが多い。

 粕取り焼酎は、清酒を絞った残り粕に、もみがらを混ぜ、せいろに並べて蒸気を通し、粕の中のアルコールを回収したもの。もみがらの焦げ臭がついた強烈な香味を持つ焼酎である。地方によっては早苗饗(さなぶり)焼酎と呼ぶこともある。



[ コラム ] 2009年07月17日

 日本でスピリッツと呼ぶのとほとんど同じ意味で、中国では伝統的な蒸留酒を白酒(パイチュウ)という総称で呼ぶ。

 ちなみに醸造酒に相当する酒は、黄酒(ホワンチュウ)と呼んでいる。まさに見たままの呼びかたのようだ。

 中国で白酒がつくられるようになったのは、アラックの影響が強かったようだ。暑い南方では醸造酒で保存するよりも蒸留してアルコール分を高めたほうが長期保存に適していることを知った宋時代に、蒸留酒は急速に普及したようだ。

 白酒の代表的なものには、マオタイチュウ(茅台酒)、フェンチュウ(汾酒)、ウーリャンイェ(五粮液)などがある。

 白酒は曲(キョク)という中国独特の麹を使って穀物を糖化して発酵させる。発酵を終えたもろみは蒸留釜へ移されて、数回蒸留してアルコール度数65%前後の原酒を得る。酒質は重厚で、荒々しさも持っているために、カメなどの陶器に入れて貯蔵し、風味がおだやかになってから出荷する。沖縄のクース(古酒)のような作り方だ。

 マオタイチュウは、香りの分類でhは醤香型で、貴州省茅台鎮の特産である。原料は紅コウリャン、小麦の他、近年は米も使っているといわれる。発酵、蒸留に9カ月、さらに最低3年間貯蔵熟成する。

 フェンチュウは、清香型で山西省汾陽県杏花村の特産である。原料のコウリャンを粉砕して、大曲とともに2回発酵させる。こちらも蒸留後、3年ぐらい貯蔵熟成させる。

 ウーリャンイェは、濃香型に分類され、四川省宜賓の特産。五穀すなわちコウリャン、トウモロコシ、もち米、うるち米、ソバの5つの原料を使うところからその名がついた。白酒の中では、洋酒に近い芳香を備えている。

 他にもコウリャンチュ(高梁酒)などがある。コウリャンチュは天津産のものが品質的によいとされている。この普及品はパイカル(白乾兒)と呼ばれている。



[ コラム ] 2009年07月10日

 アラック、ArrackまたはArakとも表記される。東南アジアから中近東にかけてつくられている蒸留酒の総称である。

 アラックの語源は、アラビア語のaraq(アラク:汁という意味)といわれているが、異説もある。

 初めは、ナツメヤシの実(デーツ)の汁を発酵、蒸留してつくられていたようだが、その後、蒸留技術が伝わっていく経路の中で、さまざまな原料が試されるようになり、今ではいろいろなタイプのアラックがその土地ごとにつくられている。

 それらを大きくまとめると
1)ナツメヤシの実の汁を蒸留したもの(日本のデーツ焼酎にあたる)
2)ココヤシ、ニッパヤシなどの花序(かじょ)を切って集めた樹液を蒸留したもの
3)糖蜜を蒸留したもの(ラムと同じ酒で、名称が違うだけと考えてよい)
4)米(主にもち米)を蒸留したもの
5)糖蜜ともち米を蒸留したもの
6)キャッサバを蒸留したもの
などになる。