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[ コラム ] 2010年05月14日

 チョコレートに関するコラムも最後の話題になってきた。テイスティングに関して、何回かに分けて掲載していきたい。

 今回は、テイスティングのチェックリストである。まずは四角く切り分けたチョコレートで、次の練習をおすすめする。

1.「見る」 色・つや・テキスチャー。特に色は美しいのか、あせているのかのチェック。
2.「触る」 割った表面がなめらかなのか、粗くブツブツしているのか。手に吸いつくような感触はあるか。
3.「聞く」 2つに割ると、どんな音がするか。
4.「嗅ぐ」 どんな香りがするか。(前回のコラムを参照)
5.「味わう」 口の中でどのように感じたか。舌に与える影響に注意して、テキスチャーのみを分析する。

 さらに、テイスティングを進めたいなら

1.小さなかけらを口に入れて少しかむ。かむのをやめて、そのまま舌の上で溶けるのを待つ。
2.時間が経つにつれ、風味や舌の感触が変化しているかどうか、集中して感じる。
3.風味をチェックする。
 a 風味が感じられるか。
 b 時間が経つにつれて風味が変化しているか。
 c それぞれの風味がお互いに作用しているか。あるいは別々のタイミングで感じられたか。
   ある風味が他の風味より際立っているか。それともすべて組み合わさっているか。
 d それぞれの風味の強さをランク付けする。
4.苦味、酸味、渋味を感じるか。それは適度か。それとも不快か。
5.良質なチョコレートの風味は3段階に分けることができる。
 a 最初の数秒間、何を感じるか。
 b チョコレートがゆっくり溶けていく時に、何を感じるか。
 c 最後に飲みこんだ時に、何を後味として感じるか。
6.最後にランク付けを行う。10点満点中、何点をつけることができるか。

 味覚は人それぞれ。何が正しくて何が間違っているということではない。気難しく考えないで、気軽に楽しくチャレンジしてみたいものだ。それにしてもこうやって書いていると、カクテルを創作するときにも使えるのではないか、と思われるくらいである。



[ コラム ] 2010年05月07日

 新しいチョコレートを味わうときは、指の爪くらいの小さなかけらで試すらしい。舌の上にのせ、数秒間かんで、もっと小さく砕く。

 そして噛むのをやめて、チョコレートが溶けてフレーバーが開くのを待つ。チョコレートが口中に広がるのを確認できれば、口の中全体で最大限に味を感じることができるという。甘味、酸味、苦味、塩味の違い、そして芳香(アロマ)と風味(フレーバー)を感じとるわけだが、渋味は低品質のチョコレート特有のものなので気をつけたい。

 ポイントは、なんといっても香りだ。ワイン・テイスティングと同じようにチョコレートを表現する言葉として、以下のような表現があるようだ。

【野菜】干し草、木、きのこ、こけ、青々した草
【花】ジャスミン、バラ、オレンジの花
【フルーティ】赤いベリー(イチゴ、ラズベリー、赤スグリ等)、トロピカル・フルーツ、ジャム、レーズン、プルーン、ドライ・バナナ
【焼いた香り】ロースト・アーモンド、焦がし砂糖、キャラメル、コーヒー、ココア、茶、タバコ
【ナッツの香り】ナッツ類すべて
【スパイシー】リコリス、ヴァニラ
【その他】皮、蜜蝋、蜂蜜、パンやトースト、クリームやミルク、バター

 ということだが、何か基準がないことには表現しようがない。次のブランドのテイスティングがおすすめのようだ。

■「ヴァローナ」の「マンジェリ」のテイスティング
最初の酸味がおさまると、はっきりとした赤い果実、ラズベリーやさくらんぼ、黒すぐりのようなはっきりとした酸味を持つ果実を思わせる香りが感じられる。少なくともフルーティだと最初に感じたら優秀ということだ。

少し慣れて、細かく表現できるようになってきたら、

■「プラリュ」の「ジャバ」のテイスティング
最初は、野菜のような香りと感じていたのが、木、さらに雨にぬれた森、と表現できる。

 なかなか難しいが、自分が感じた香りをお客様に表現できるようになればしめたもの。チョコレートだけではなく、モルトやカクテルの表現力にも役立てたいものだ。



[ コラム ] 2010年04月30日

 前回の続きで、「チョコレート・バイブル」がおすすめするチョコレート銘柄の後半リストである。

■エルセイボ・ボリビア
農業協同組合である「エルセイボ」は、1995年よりボリビア国内用マーケットにチョコレートを生産・販売し、1997年より主にオーガニックやフェアトレードでカカオ豆の輸出を行っていた。2008年よりブランドとして最終商品の加工、さらに輸出まで行うようになった。農業協同組合としては世界で現在唯一の例である。「タブレット・ボリビア71パーセント」と「ドリンギングチョコレートボリビア85パーセント」がおすすめ。

■フェルクリン
スイスで1908年創業したプロフェッショナル向けの完成前商品群をもつ。直接一般向け商品の販売はないが、ベネズエラの豆を使用した「マラカイボ65%ダークチョコレート」「38%ミルクチョコレート」がおすすめで、『ベシュレ』『シュプリュングリ』『パコマ』などの販売会社を通して購入できる。

■ギタード
家族経営の1886年に創業したアメリカ・サンフランシスコ近郊のチョコレート製造会社。主に業務用チョコレートを生産。2000年ころから世界中の小規模農園の厳選した材料で最上質のチョコレートを生産し、アメリカ内外の専門店で販売している。

■プラリュ
フランス・ロアンヌで1948年に創業。厳選されたカカオ豆を使い、ひとつひとつ丁寧に高品質のチョコレートを作っていることで有名。チョコレートがワインのように芳(かんば)しく複雑であることを感じさせてくれる最高のブランドと言われる。ほとんどの種類が同じレシピから作られていて、違いは世界各国から集められたカカオ豆のみ。産地によるカカオの特徴をつかむには、これらのチョコレートを比較することがすすめられている。収穫によっても味が変わるようだ。

■シャーフェン・バーガー
2006年にハーシー社に買収されたため、品質に影響が出たかもしれないが、1996年から2006年にかけて職人的な機材を使って多種のチョコレートバーを生産していたアメリカの会社。本物のバニラビーンズで強く香りづけられているのが特徴。限定版チョコレートバーに出会えれば必ず試してみるべき。

■ヴェローナ
1922年創業のフランスのブランド。1985年に業務用として、さらに1986年に一般消費者向け「グラン・クリュ・チョコレート」を発売。「カライブ」はカリブ産、「マンジャリ」はマダガスカル産のカカオ豆を使用するなど、限定地域から最上質の豆を厳選して使用している。成功を収めた伝統的な会社による信頼性の高い上質のチョコレートが味わえる。「グラン・クヴァ」と「パルミラ」がおすすめ。

 本物の味を知ることが、ファインチョコレートを名乗る『偽物』を見極める方法と語られている。シングルモルトとのマリアージュが話題だが、本物を知る酒のプロとしてチョコレートの最高峰ぐらい知っておきたいものだ。